修了生+卒業生>白石晃



修士研究(作品) 素材と様相の建築/アルゴリズムを用いた線・面・体の構成による建築空間の設計手法

設計趣旨
建築は、素材の発見と発明によって、その歴史を発展させてきた。土や石、木といった自然に由来する素材に始まり、コンクリートや純度の高い鉄、ガラスの発明によって建築は、多様な構造や形態、表現を獲得してきた。 また、近年の情報技術の発展によって、建築を情報学的に把握・制御し、生産できるようになった。一方で、物理学や生物学、経済学の一分野では複雑系科学によって従来の還元論的手法では説明しきれない、複雑で適応的な現象について研究されてきた。 ある物質や現象において、形態を一意に決める論理があるのではなく、本質を決める論理がただ1つあり、初期条件や他の複合条件によって、形態は無数の様相を呈するのではないかと考える。例えば、雲について考えてみる。空を眺めてみれば、1つとして同じ形態の雲は見つからないであろう。しかしながら、雲は水蒸気によるその生成プロセスにおいて、同じ論理、法則によって生成されている。同じ生成プロセスでありながら、水蒸気を取り巻く初期条件や、他の複合条件によって、多様な形態を獲得することがわかる。 以上のような複雑系科学的な視点から建築を捉え直すことによって、建築空間の新しい設計手法や新しいイメージを提示できるのではないかと考える。 本研究では、3次元CADであるRhinocerosとそのプラグインとして機能するGrasshopperと呼ばれるヴィジュアルプログラミング言語を用いて素材とその取りうる様相の可能性を探り、単純な論理から複雑なふるまいを生み出すシステムについて考察する。そして、それに基づいて設計した新しい12種の建築空間を提示することを目的とする。よって、ある特定の用途や機能を持った建築物を設計するのではなく、アルゴリズムによる空間の生成方法や設計手法そのものに着目している。